子どもは生まれることを選択できない絶対的な受容体であり、それ故の不安を全力で受けとめる(おっぱいを差し出す)ことができなければ、たちまち子どもは存在としての危機を迎えてしまう。
その不安が怒りや悲しみとなって表出される。その表出された怒りや悲しみを徹底的に受けとめることでそれは解体されていく、というのが芹沢独自のイノセンスの理論である。
ここにさらにウィニコットの「あるbeing」と「するdoing」という概念を交差させ、実際の虐待やいじめ、子殺しなどの事件を深く読み解きながら、普遍ともいえる地点へと養育論を育てていった。
本書は、表層の解釈では見えない事件の本質を、養育論的視点で語ったものである。