芹沢俊介 養育を語る 事件篇Ⅰ

 

刊行にあたって

 子どもは生まれることを選択できない絶対的な受容体であり、それ故の不安を全力で受けとめる(おっぱいを差し出す)ことができなければ、たちまち子どもは存在としての危機を迎えてしまう。
 その不安が怒りや悲しみとなって表出される。その表出された怒りや悲しみを徹底的に受けとめることでそれは解体されていく、というのが芹沢独自のイノセンスの理論である。
 ここにさらにウィニコットの「あるbeing」と「するdoing」という概念を交差させ、実際の虐待やいじめ、子殺しなどの事件を深く読み解きながら、普遍ともいえる地点へと養育論を育てていった。
 本書は、表層の解釈では見えない事件の本質を、養育論的視点で語ったものである。


事件篇1 目次

刊行にあたって



池田市 宅間守大阪教育大付属小学校襲撃事件


宅間守事件と関連想起される事件/アノミー型の犯罪/事件のきっかけ/報復の対象/あの親にしてこの子だな/正当化された暴力/「挨拶のできる子」への要求/父親殺しの衝動/父殺しができていれば/目を合わせない日本の文化/情性欠如 ― 精神鑑定について/受けとめ手の不在/人間関係の作り方がわからない


佐世保市 十一歳女児同級生友人殺害事件


二人の事件/心のぶつかり合い/仲良しゆえの凶行/思春期というテーマ/作文/加害少女の書いた詩/バトル・ロワイヤル状況/孤立と不信/教育家族の露出


岸和田市 両親十五歳男子虐待餓死未遂事件


「事件」のあらまし/食事抜きという仕打ち/悪意の関与/父親はなぜ阻止しなかったのか/存在感覚を奪う/家族の事情/望ましき家庭像/虐待の始まる仕組み/裏切られた夢


伊豆の国市 十六歳少女母親タリウム投与事件


母親に「タリウム」を飲ませる/「関係」から「個人」へ/母親殺しのファンタジー/実験ということ/親密性のない家族/「酒鬼薔薇聖斗」の実験との類似性/「いるのにいない」/少女の中に母親はいない/待てない子どもたち



書名 芹沢俊介 養育を語る 事件篇1
発行日 2018年5月30日
サイズ等 A5判 93ページ
ISBN 978-4-9910235-0-7
定価 1000円(税込)