芹沢俊介 養育を語る 事件篇Ⅲ

 

 「いまここに・安心して安定的に・自分が自分である」という存在感覚をもち得ないとき。もしくは奪われてしまったとき。
「ある」が「する」に先行することが出来ず、「する」が「ある」に先行してしまうとき。それは、子どもにとって過酷な状況を強いられたことに他ならない。
「ある」という存在感覚の生成は、受けとめ手を得て受けとめられ体験を経ることによって「いまここに・安心して安定的に・自分が自分であること」の感覚を得ることができるということ。これが、芹沢養育論の中心的な問題意識である。
この存在感覚が奪われたり、消しされられたりする子どもたちの状況を芹沢俊介は、事件を通じて解析していく。


事件篇Ⅲ 目次

はじめに

宝塚市 十五歳少女二人による共謀放火殺人事件


親殺し連続放火事件/動機は憎しみ/事件を予告/犯行の進められ方/仏心が出た/家庭という要因/義父の登場/同じパターンが繰り返される/しつけという暴力/親子の主張の食い違い/子どもへの配慮を最優先に/いじめ/B女の反抗/子殺しが先行していた/二つの親殺し事件


川崎市 十四歳男子硫化水素自殺事件


自殺の背景としてのいじめ/遺書が残されていた/教育現場に欠けていたいじめ認識/「いじめ自殺」報道の経過から/調査委員会「自殺はいじめが背景」/真相へ/いじめという暴力のほんとうの残酷さ/A君の屈辱的内面を想う/いじめの基本的知識を持っていれば/いじめ議論を避けたい気持ち/いじめの構造/いじめという暴力の参加者/「見えるいじめ」の四層構造/見えないいじめの見つけ方/いじめは標的を自殺に追い込む


佐世保市 十六歳少女同級生殺害事件


殺人と解剖と/解離という言葉/知覚と体験がバラバラ/十六年しか生きていない/選択的無差別/破壊欲動への両親の態度/動物迫害から人間破壊へ/先行する子殺し/措置入院はできなかったか/「ある」と「する」/命題の逆転/A女への周囲の評価/養育の基本は受けとめ/苦痛を切り離す

川崎市 十三歳男子リンチ殺人事件


「曲従」の関係/集団犯罪/異年齢集団の中で/集団の中で最年少の新米/孤独が結びつけた関係/求められた集団への忠誠心を拒む/殴られた上村君/殺したいほど恨む理由/「ヤバイかもしれない」/なぜ死地に近づいたのか/固まっては崩れる存在の基底

刊行にあたって


書名 芹沢俊介 養育を語る 事件篇3
発行日 2019年2月15日
サイズ等 A5判 113ページ
ISBN 978-4-9910235-2-2
定価 1000円(税込)